◇ 百合side ◇

米沢城に入れるか、行ってみようとなったわたしと愛は一緒に歩いていた。

米沢城には、どんなものがあるのだろう…とどきどきしながら思わず足取りが速くなっていく。

やっとの思いで門らしき所にきたとき、あったよ!と言わんばかりの笑顔で振り返る。

「ねぇ、あ…い?」

すると、愛がいると思っていたそこには…誰もいなかった。

もしかして…置いていかれたとか…?

…いや、愛に限って絶対にあり得ないよね…。

お手洗いとかだったりするのかもしれないけど、一言も言われてないし。

何で…?


ハテナマークが頭いっぱいに広がったわたしは、ふと頭に過った“誘拐”という二文字によってパニックになりつつも、急いできた道を戻っていく。


「はぁっ、はぁっ」

最終的に始めに解散した所まで走って戻ってきたが、一度も愛の姿を見つけることはできなかった――…。