「ま〜た、日向君をジッと見てる…!いっそのこと、あの女の子たちの輪の中に入って、日向君とお話してきちゃいなさいよ〜!」


ニンマリとした笑みを浮かべる美波に、私は大げさなぐらい首を左右に振った。


「むむ、無理無理っ!それは…無理だよ…!」


日向君の周りをグルリと囲む女の子たちの輪を割いて、日向君に話し掛ける勇気も度胸も無い。


こうして、自分の席から見つめるのが精一杯だ。


「でもさ、せっかく日向君と同じクラスなんだから、会話して仲を深めなくちゃ!まだ、一度も話したことないんでしょ?」


「う、うん…。」


美波にそう言われた私は、歯切れの悪い返事をしてしまった。


確かに、入学してから今日まで、日向君とは一度も言葉を交わしたことがない。


きっと、そんな女子は…私ぐらいじゃないかな…。