由宇はニヤニヤしてる。
楽しんでる、確実に。


てゆーか、クラス中の視線という視線が私と龍崎の二人に集まっている。
私は睨みつけそうになるのをグッと抑えて、龍崎に微笑みかける。


「…自分で食べれます」

「食べれてなかっただろ」

「それでも食べれます」


背中をのけぞって、龍崎の手から遠ざかろうとするが
その距離の分、伸びて近づく手。

何ですか腕長いですね羨ましいことこの上ない。


「早く」


そう言って催促してくる低い声。
分かったわよ分かったわよ。

この視線から逃れるのも
この手から逃れるのも
これを食べるのが手っ取り早いんでしょう。


…由宇、覚えておきなさいよ。あとでチョップをプレゼントね。



意を決して
口を開ける。

と、同時に入ってくるトマト。


モグモグと咀嚼すると硬いモノがあった。

うぇ、
これ蔕が付いてる。



ティッシュに蔕を出して、ゴミ箱に捨てるために立ち上がる。


「ゴミ箱ゴミ箱、…うわ、ゴミ凄っ」




その間に、
なんか龍崎が慌てて去っていったらしい。

机の上にゴミを置いたまま。

…捨てていきなさいよ。
ゴミ箱まで往復とかめんどくさい。