うかつにも、楽しいと思ってしまった。


中道と歩いた道のりが……


短いと感じてしまった。



野球の話くらいしかしてはいないのに………。






「…………そうだ。」



中道と私を結びつけるものがもうひとつ…。




「……あれ…?…ない。」



通学用の鞄の中を漁る。


「………。」



筆入れの中。



「……ない。」



おかしいな。
外した所までは記憶がある。



「……制服…?」



制服のスカートのポケットには……?




……ない。




部屋の机の上。


引き出しの中。



ベッドの下……。




今思い付くありとあらゆる場所を探す。




「……ははっ…、無くなってるし。」



今更……気づいても遅い。





中道が私に選んでくれた、唯一のもの……。




あの、キーホルダーが……



なくなっていた。






「……大事にしてたのになあ……。」



なぜ、忘れてしまっていたのだろう。



なぜ、思い出したりしたのだろう。




まるでこうなることを暗に予告されているみたいだ。









夏が……


幕を閉じようとしていた。




暗い夏の夜に……



蟠りを残して。







そして……




私は後悔する。




自分の弱さと…


幼さと…


浅はかさと…






不甲斐の無さに……。