「ここのところ必ず有さんもご一緒だったので、何だか今日は寂しいですね」


と言いながら沢さんがオレに緑茶を出してくれる


「あぁ、確かにな」


オレが素直に認めると


「坊っちゃんが特定のお嬢さんを連れていらっしゃる事なんて今までなかったので私、とってもうれしゅうございます」


と、言いながら顔をほころばせる沢さん


「そうかな?」


「そうですよ、坊っちゃん今までちゃんと一人の女性を好きになるなんてなかったじゃないですか?」


「好きって沢さんオレには婚約者いるんだよ」


好きだって気持ちを打ち消すかのようにオレは言った
なのに、沢さんはーーー


「だから何ですか?人が人を心から愛するのは悪い事ではありません」


沢さんはオレの顔を正面からみると


「むしろ好きでもないのに結婚したり、好きなのに自分の気持ちに嘘をつく事の方がよっぽど質が悪うございます」


そうキッパリと言うとお茶のお代わりを入れてくれた


そのお茶は明らかにさっきのより熱かった