「はあ?席替え?」



私の右斜め前から、奴が声を上げる。




「なんで今頃~?」



他のクラスメイトも次々と不満の声を上げた。




…確かに。何で今頃?



「まだ一回もしてないだろう?それに、馴れ合いもいいが新しい人間関係を築いていくのも学生時代の醍醐味!…と、いうことで……、上原っ。HR終わったらクジ作っておいてくれ。」



…げっ…。
私?



「不満そうだなぁ、仕方ないだろ、学級委員!相方の丸井は休みだし、まあそんな時間かかるモンでもないから…、頼んだぞ。」




「………はあ~い。」



そうだった。
出番がなさすぎて忘れていたけれど……、


私、学級委員だったわ。




「ほら、用紙はかわいらしくピンクにしといたからなぁ~。」




担任がそれはそれはかわいらしい薄ピンクの紙を私の机においた。



あいにく、別にピンクは好きではありませんが……。






HRが終わると、私は早速クジ作りを始めた。




「災難だねえ、柚。」



「…りっちゃん。そう思うなら手伝っておくれ。」



「残念、私トイレ~♪」



「薄情ものぉ~…。」



律はさもおかしそうに笑いながら……



颯爽とこの場を去って行った。





「…ご愁傷様。」



右斜め前の背中が、嫌味を語る。



……無視無視っ。




「…感じわりーぞ。」



「うるさいなあ。私、アンタみたいに暇じゃないの。」



「………。」



ついに…、



奴はぐるんとこっちに振り返る。




「うわー…、仕事雑っ。見ろよ、紙の切り口。ガタガタ!…性格でるな。」




…無視無視っ。



「………。」



「…もうちょっと、要領よくいこーや。」



中道は私の手からひょいっと紙を奪うと……



それに、丁寧に折り線をつけていった。



「……。いいよ、私するから。」



「いーから。お前は俺が切り終った紙に番号ふっていけ。」



「…………。」




「木下、ちょっと席貸して。」



奴は私の真隣りの席に移動すると…、



黙々と作業を始めた。




「中道やっさし~!」



トイレから戻ってきたらしい律が、ひやかしをいれながら…


けれど、やっぱり素通りしていく。



「……薄情者…。」



私は再び呟いた。