二枚目……。



背も高い。



うん、



笑顔もマル。




ただ……






「『結』ちゃん彼氏と別れたばっかりって聞いた。あのさ…、俺と付き合ってみない?」





ただ……






「ごめんね、私君に興味ないから。」




私はとびきりの笑顔でそう言うと……



踵を返して、中庭を後にした。




だって、



私は……




『結』じゃない。




告る相手を間違ったのが運の尽きだったね。





私は道端の石ころをポン、と蹴飛ばすと……




彼女が待つ、その場所へと……



小走りで駆けていった。










学校からの帰り道…




「え!里中くんが?…うっそー……何で振ったの?」



「告る相手間違えたらそりゃ振るでしょ~。」



「だって『あの』里中くんだよ!勿体ない!…で?何で私の事好きだって?」



「…えーと…。」




私はウロ覚えながらも、必死に中庭での出来事を思い出す。




「りっちゃんに呼び出されたその中庭に里中くんがいて…、『結ちゃんかわいいってずっと思ってた』って。」




「…で、で…?」



その当の本人【結】はー…


いよいよ身を乗り出してきた。



「『彼氏と別れたって聞いた。俺と付き合わない?』的な感じだったかと…。」



「……柚(ゆう)。」



「…ん?」



「………馬鹿ぁ…。」



「……はいはい、悪かったって。」



みるみるうちに……
涙目になる結。



思わずたじろぐ私、
柚ー…。




仕方ないじゃない?



相手が私と結を間違うんだもん。



それに今回に限っては…、しばらく彼氏なんかいらないって言ってたからさ。

だから振ったのに…



ああ……



わからん…。






「…とにかく!私のフリするのはしばらく禁止っ!ばか柚!」




結はぷうっと頬を膨らませると……



私の前を、どんどんどんどん歩いて行った。




坂道を一気に駆け抜けるその後ろ姿は……



さほど、元気がない訳ではなさそう。

意外と軽やかな足どりだった。




「…仕方ないなー…、もう。」




私はふうっと息を吐くと……




「…待てーッ結っ!!」



「…マジで……?きゃーっ!」




全速力で……




結を追いかけた。