だから恋人だって。
その言葉を飲み込んで、軽く頷いた。
「先生?
集合の時間、間に合わなくなっちゃいますよ?」
彼の隣にいる教師が、彼の腕を掴みながら言う。
そんな一つ一つの行動に、イライラを募らせていた。
「あ、はい」
女教師はニコリと微笑むと、私に視線を合わせお辞儀をしてきた。
まるで“私の彼氏が失礼しました”と言うように。
「あの女教師、彼女面だな」
「.........」
「こっちも、彼氏面してやれば良かったか?」
私は俯きながら、堪えきれなくなった涙を隠すように、先輩に背中を向けた。
「おい、大丈夫か?」
先輩の手を振り払って、私はカゴと商品の存在を忘れ、ただ彼のいる店から出たくて、走り抜けた。
途中、修学旅行生にぶつかり、怪訝な顔をされたが気に止めることが無いくらいに、必死だった。
「先生....今ぶつかってきた人、謝りもしない最低な女性でした。
でも....泣いてた」