「母親相談窓口じゃないのだけどな、僕は……。ただ、答えられるとしたら、五十鈴さんが言う『そいつの遠慮』は何も一概に『壁を作って溝を作る』わけでもない」


「距離感が離れていくような感じなのにか……」


「遠慮とはそもそも、『相手のためを思って』が大前提だ。『迷惑だからいらない』というのは単なる拒否だが、五十鈴さん自身が『遠慮と言える時点』で少なからず、『そいつは私のために』と思う節はあるんじゃないのか」


「ああ……。私が忙しい身だからだろう。どうにもあいつは、自身の価値をマイナスとしか見ていない。悪くなど言いたくないが、謙虚も行きすぎれば卑屈にしかならないからな。

そんなマイナスの自分――価値ない自身に『他人が何かしてくれる』ということに『ありがとう』ではなく『すみません』と、つまりは『悪い』と感じるらしい。

別に私は恩を売るつもりはないが、家族に会いに来たという感覚で私が行っても、あいつは『忙しい中、わざわざ僕に会いに来てくれた』に変換してしまう。

『悪いことしたな』、と」