「雪乃ちゃんも、そんか感じだった?」


「えっ?」



いきなり話を振られて思わず声が出た。


あ、そっか……。


私は施設から逃げてきたことになってたんだ……。


本当は両親がいて、平凡だけど幸せな家庭に育って、いつもと同じ時間が流れて……。


そんな生活をしていた私からしたらレイナさんの人生は壮絶で、そんなのは物語の世界だけだと思ってた。


だから、自分の置かれてる状況をすっかり忘れていた。



「えっと……」



私は聖夜さんの方をチラッと見る。


静かに本を読んでいる聖夜さん。


今まで、いなかったんじゃないかと思わせるくらい静かで……。



「やっと、レイナの不幸話が終わった。もう聞き飽きたよ」



聖夜さんは、本をパタンと閉じると、そう言ってクスッと笑った。



「ちょっと、アキ!そんな言い方しなくてもいいじゃない!それにアキに話してたわけじゃないしぃ!」


「うん、そうだね。でもイヤでも聞こえてくるんだよね」



聞き飽きたって、聖夜さんはレイナさんの生い立ちを聞いたことがあるってことかな?