まいった。


俺は〝客〟がバスルームから出てこない様に外から鍵をかけ、
近くの壁に寄り掛かった。


滴る雨の雫が、床の絨毯に染み渡る。
濡れた前髪をかきあげると、


「紘夜(こうや)様」

目の前に差し出された、白いタオル。
静音が、心配そうに俺を見ていた。


「ありがとな、静音」

そう言って、俺は静音からタオルを受け取り、頭をガシガシと拭いた。


「お客様には、とりあえず、私の服をお貸ししてよろしいでしょうか?
明日、お客様用のお洋服を用意いたしますので…」

「ああ、頼む」

俺は黒いスーツの上着を脱ぎ、シャツの釦を幾つか外すと首元を緩めた。