「でも、もし君が本当はディオンだと気付かないまま、奴らが精神世界(こころ)に入ってしまえば、ディオン、君が壊れるんだよ」

それでもいいよ、とディオンは言う。

「セリシアが傷つかずに済むのなら、僕は何をされたって、構わない」

そっか、とセリシアは呟く。
悲しいという感情を失った彼女にとって、それしか言葉が見つからなかった。

「雨が止むまで眠るといいよ。大丈夫、僕は、ずっと君の傍にいるから」

「……うん」

ゆっくりと、セリシアは目を閉じる。

「――おやすみ、“ディオン”」

よい夢を、と言って、“セリシア”は優しく、彼の頭を撫でた――。