「このままじゃ、本当に……君は壊される。そんなのは、嫌だよ。……どうにかして、此処から逃げ出さないと」

けれど、逃げる方法などない。
扉には鍵が掛けられていて、びくともせず、小さな窓がある場所は、二人にとっては高すぎて、到底届くことなど出来やしなかった。

「一体どうしたら……」

男の子が呟いた、そのとき――鍵の掛けられている扉が、静かに開(ひら)かれた。
咄嗟に、彼は女の子を抱き寄せる。

「……ディオン、セリシア」

扉の向こうにいたのは、アイアンブルーの髪と瞳を持った、三十歳ほどの男。
その男には、二人とも見覚えがあった。

あの男は……いつも僕らが実験を受けているとき、悲しそうな顔をしている奴だ。

他の奴らはニヤニヤと笑っているのに、あの男だけ……いつも傷ついた顔をしている。
男の子は、そんな男のことが嫌いだった。
まるで同情しているかのような、その瞳が――その表情が、気に食わなかった。

「………」

近付いてくるその男を、精一杯睨みつける。そっと、男は双子の頭に手を添えた。

「ごめん、ごめんよ」

二人を胸に抱き寄せて、震えた声で、何度も呟く。

 ……泣いてる?
 一体、どうして――……。

「私のせいで、君たちが傷つくことになってしまった……」

本当にごめんよ、と男は言う。二人は、黙り込んだまま。