「こんな時刻に街中で誰かと会うとは、珍しいな」

フェイの前に姿を現したのは、外套(がいとう)を身につけ、さらに仮面をつけている怪しげな者だった。

「お前は、何者だ」

「僕はさすらいの旅人さ」

「そんな仮面をつけておいて、旅人だって?」

見え透いた嘘だな、と鼻で笑う。

「これにはわけがあるんでね。でもまあ、お前には顔を見せても大丈夫そうだな」

怪しい旅人は紐の結び目に手をやり、その不気味な仮面を外す。
僅かに靡(なび)くプラチナブロンドの髪は月明かりに照らされ、煌々(こうこう)と輝いているかのようだ。瞳はサファイアその物のように、とても美しい。

まるで女であるかのようなその整った顔つきを見て、フェイは思わず息を呑(の)む。

「か、仮にお前が本当に旅人だったとしても、ただの旅人だとは思えない。仮面をつけているなんて、怪しすぎる」

警戒心を弱めることなく、目の前の少年を鋭く睨みつける。
そんなフェイの様子に、少年はしばし悩み、小さくため息をついた。

「……見せるしかないか」