誰もいない家に入る。


しんと静まり返った無駄に広い空間。


一人っていうのはこんなにも心細い事だったっけ?
俺はソファに体を投げ出すと天井を見上げた。


走り去る後姿。
掴まれた腕を、無理矢理引き離す姿。

今にも泣き出しそうな、その表情……



「…………ほんと意味わかんね」



俺はそう呟くと、顔の上に腕を乗せた。
これ以上考えないように……。







コチコチコチ……


「ん……」


目を開けると部屋は薄暗くなっていた。
いつの間にか眠ってしまったんだ。


重たい体を起こし時計に目をやる。
針は五時を回ったところだ。



未央が帰っている気配がない。
外を見ると今にも雨が降り出しそうだ。



「何してんだ、あのバカ」




俺は傘を持って、家を出た。
どうせ、変な勘違いでもして、家にはいない方がいいなんて思ってんだな。

顔を撫でる風が湿っぽい。


俺は人通りのまばらな住宅街を急いだ。