第3講義室に着くと、開口一番裕子が、
「朱里、昨日何かあった?」
と聞いてきた。
…さすが鋭い。
朱里は、昨日森さんから告白されてお付き合いすることになったと二人に伝えた。
「よかったね。あ~でも藤倉に同情するわ。目の前で大切にしてきた小鳥を拐われたわけでしょ。」
「裕子が慰めてあげたら?」
「私はああいう爽やかイケメン、パス。
いい人過ぎて胡散臭くない?裏がありそうって言うか。」
「まあ、あの顔であの性格『女ホイホイ』みたいな男だもんね。彼女になったら神経磨り減りそう。」
二人の会話に胸の奥が重くなる。
いい人のふりをして、いつもニコニコ笑っているけど、本心は底なしの渕のように濁って自分自身すらよく見えない。
本当の私を知っても、森さんは変わらず私を好きでいてくれるだろうか。
「朱里、あ~か~り。聞いてる?初カレできたばかりなのに、何でそんな顔してんの?」
裕子が顔を覗き込んで聞いた。
「あっ…えっと…なんか私でいいのかな…とか。色々心配で…。」
「朱里は何でそんなに自分に自信がないの?」
自信がないんじゃなくて、自分がないんだよ。
何もないのに、自信なんて持てない。
朱里は心の中でそう呟いた。
ケータイ小説 野いちご
いつも何度でも
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