「ていうか、浮かせちゃえばいいんだよね。
そんじゃーいくよ?『フライ』!」

「へっ…あ、きゃあっ!」


美風の身体をふわりと浮かせ、自分でも小さく『フライ』と唱える。
宙を舞う不安定で細い身体をそっと抱きかかえる。


「ととと桃依様っ!?」

「だってー美風、全然飛ぶのに慣れてないんだもん。危なっかしくて見てらんなーい!
大人しくボクの腕の中に収まってなさい!」

「そそそそんなっ…!こんなところ誰かに見られたら…っ…。」

「誰かに見られたら…なぁに?」


ただでさえ赤かった頬がもうリンゴよりも赤い。
美風は本当に可愛い。


いつだって一生懸命でひたむきで。
失敗だって多いけれどへこたれたりなんかしない。


ケガの多い現場で、傷だらけで泥だらけで。
…一生懸命すぎて自分のことなんて省みなくて。


「…と、桃依様にご迷惑をかけてしまいますっ…。」

「どーして?ボクは全然迷惑じゃ…。」

「私っ…迷惑ばかり…かけてますっ…。だから桃依様のお役に立ちたくて…。」


美風の声が少し震えている、そんな気がする。