この世界にきてから、何度目かの春。
幸姫は、政宗にお願いをして、小さな箱をもらった。

そして、その箱に、使えなくなった携帯電話と、一通の手紙を添えて、姉滝の、ちょうど自分が滝つぼに落ちた辺りに埋めた。

「何をしているんだ?」

一緒についてきた政宗は、箱を埋めている幸姫を見て、不思議そうに聞いた。

「タイムカプセル」

「た…?」

首を傾げる政宗に、幸姫は箱の上に土をかぶせて、ぽんぽんと叩いた。

「なんでもない」

そう言うと、政宗の手をとり、もどろう?と滝の傍を流れる川沿いに歩き、家へと帰っていった。