「・・・幻周(げんしゅう)の、ことか?」

「幻周?」

「父と以前から、繋がっていた男だ」


 天冥は、あの異様な目の光の影を思い出す。

(あいつの事か・・・?)

 まぁ、いづれ分かるか。

 そう思い、天冥は明道の背に回った。刀印を明道の首に当てる。


「動いてはいけませぬぞ」

 
 ぼそり、と天冥は言った。


「今、この印に術をかけておりまする。これに切られれば、皮が裂けますぞ」


 天冥は、そう明道の耳に注ぎ込んだ。

 実際、術を使ったわけではなく、今言ったことは嘘だ。ただ、相手に従ってもらうためにも、こうした嘘を付くのである。

 やろうと思えば、出来るが。


「これから依頼主、藤原 昌明(まさあき)殿の所にゆきまする」

「なんだって?」

「いいから」


 天冥は無理に押し込むように言うと、明道に向かってほくそ微笑んだ。