ドサドサドサッと階段を下りる音がして、

優がリビングに入ってきた。


続いて母さんが入ってきて、

母さんは、キッチンで、お茶を入れ始めた。


優は、ソファーではなく。

カウンターキッチンに続いている

テーブルの方の椅子に座った。


なんだよ、避けてんのか?


まだ反抗期なのかよ。



俺はソファーから立ち上がって、

無言で座っている優の前に向き合うように椅子に座った。



母さんが優の前にお茶を置き、

俺の前にも、さっき飲んでいたお茶を持ってきてくれた。


そして、なぜか母さんはリビングから出ていき、

俺と優を二人きりにした。



・・・・なんか気まずい。




優を見ると、補聴器も人工内耳もつけていなかった。

それじゃ・・聞こえねーじゃん。


俺は、トントンと、机を叩いた。

すると、優は俺の顔を見た。


「耳、どうしたんだよ、つけてないの?」


俺は、手話で優に話しかけた。


優は驚いていた。


「お兄ちゃん、手話・・覚えたの?」


優は手話を使わずに話した。


「当たり前だろ。耳鼻科医目指してるんだ。

手話ぐらいできないとな」



本当は違う。優が聾学校を選択してから、

俺は手話を覚え始めた。

これから優は、手話の世界に入っていくと思ったから。