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 ドッペルゲンガーの恐ろしい話は知ってるかい? もう一人の自分。それに出会うと、出会ったものは……死ぬ……って言われている。
 僕と徹が高校生の時、あるテレビ番組で『ドッペルゲンガー』について取り上げるということで、番組に使うVTRの取材を受けたことがある。
 僕と徹は渋谷のスクランブル交差点にロケ当日、同じスーツ姿で登場した。
 ……実は恥ずかしかったよ。ただでさえ双子ということで目を引くのに、大勢の人の前で同じ格好だからね。しかもテレビ局のカメラとかもあるから、何かのドラマ撮影かと野次馬も出たし。
 適当に言われた通りの事をして、僅か30分程で撮影は終了した。30分間、交差点をウロウロしただけで一人一万円の手当てを貰った。
 ……割のいいバイトだよね。こんな事でお金が貰えるなら芸能界にデビューしたら凄いだろうねって、徹と二人で夢物語を語ったよ。まあ、もちろんそんな夢みたいな事はある訳ないんだけどさ。
 で、せっかくだから渋谷でそのまま買い物でもしようかという話になった。目立ちすぎちゃうから、デパートのトイレで持ってきていた普段着に着替えてフラフラしたんだけど……。そうしたらね、不思議な事件が起こったんだ。
 しばらく買い物をした後、各自の買いたいものを買うために一旦別れたんだけど、あるデパートの地下食品街で僕達は待ち合わせたんだ。それで、約束の5分前に僕は地下食品街へやって来た。