曲が終わって、また、先生が機械のスイッチを押した。
「息ピッタリね。1組はOKっと。明日が2組で・・
これから私は職員室に戻らなくちゃいけないんだけど、
もっと練習したかったら勝手に使って。
ここ、鍵置いておくから、終わったら職員室に戻してね」
そう言って、先生は音楽室から出て行ってしまった。
練習?練習必要か?
「練習って・・もう完璧だよな」
俺は頭をかきながら、桜木を見た。
桜木はまた、ぐーっと下を向いてしまっていた。
もう少し、桜木といたい。
でも、部活も気になる。
俺は、音楽室の窓から、今部活のメニューが、
どこまで進んでいるのかを確認した。
まだアップか。
もう少しなら・・
もう少しだけ、
桜木のピアノを弾く姿を見たい。
「じゃあさ、なんか弾いてよ。
ピアノ、聴かせて」
そう言ったら、下を向いていた桜木が、
バッと顔を上げて、
大きな瞳をキョロキョロさせて困っていた。
俺は、グランドピアノのへこんでいる当たりに両腕をのせ、
「えっと・・えっと・・・」
と、しばらく困っている桜木を見つめていた。