「成海くん!好きな子いるの?」


前野がなぜかワクワクしながら聞いてきた。



「別に、いないけど」



はっきりと正直に答えたら、

前野はちょっとムッとした顔をした。


なんなんだよ。ていうか、もうほっといてくれよ。



その時、やっとチャイムが鳴ってくれて、

前野たちは、俺の席から離れた。







バタン!!



ん?


後ろを振り向くと、小さい女子がしりもちをついて

倒れていた。



「あ……ごめんなさい」


どうやら、前野とぶつかって倒れたようだ。


前野は何も言わずに自分の席へと戻っていった。


なんで倒れた方が謝るんだよ。

ていうか、立たせてやれよ。


俺は、その子を立たせてあげようと、


教室の後ろに向かって歩いた。



すると、俺が手を伸ばそうとしたときに、

その子は、すっくと目の前で自分で立ち上がった。



そして、俺を見上げたんだ。



大きな瞳で………



そして、何も言わずに、自分の席へと戻っていった。