「おじさん、おばさん! あたしなら大丈夫っ、自分の家に戻るから」


喉仏が動くたび、「男の人」なんだと言われてる気がして……。
なんだかそう考えてる自分が恥ずかしくて、あたしは慌てて訴える。



「そんなわけにいかないわ!未央ちゃんを守る義務があたし達にはあるのっ」



いやいやいや!!!

この家に、この人といた方が危ない!!



間違いなくっ!!!





「母さんは 2週間くらいで帰ってくんだろ?」


え?

なにそれ。


そう言いながら、要は首にかけていたネクタイを締めた。

器用に結ばれていくネクタイを見つめたまま、あたしの頭には?マークが物凄い勢いで浮かんできた。


なにを言う気なの?


「早ければ……なんだけどね」


そして、不意にその視線を上げた要の瞳が、あたしをしっかりと捕らえた。


絡まる視線。

要は、ネクタイを直しながら「ふー」と大袈裟に溜息をついて見せた。



「……しょーがねぇな。 めんどくせーけど」


「え、ちょ……ちょっと待って」



しょーがないって……それって、それってどういう意味?

しかも、なによ……そのやな感じ!
めんどくさいのはあたしの方よ!



あたしはおばさんを見た。

おばさんとおじさんは、眉を下げて不安そうな顔であたしの返事を待っているようだ。



そ、そんな顔しないで……!



なんでこうなるの?

おじさんのせいじゃないってわかってる。



「……わ、わかりました」



でも、あたしってツイてない。


あたしは、おじさん達に気づかれないようにがっくり肩を落とした。