しかし……。

ぼくの中では手鞠ちゃんが居なくなったという喪失感に苛(さいな)まれ、それどころではなかった。






ぼくは馬鹿で、どうしようもない人間だ。


手鞠ちゃんを失ったのは自分の起こした策略によってのこと。


こうなるべきだと考えたことだった。



なのに――――――。


ぼくは後悔している。




手鞠ちゃんを泣かしたことに……。


ぼくの手から離れてしまったことに……。





だが、こうするしかない。


なかったんだ。




手鞠ちゃんに感情移入すればするほど、彼女に危険が迫ってくる。





尚吾に目をつけられた。

手鞠ちゃんを尚吾の手から逃すには、この方法しかないんだ。





そう、言い聞かせても胸はズキズキ痛みはじめる。




目を閉じてこの現実から逃避しようとすれば、

最後にここを走り去って行く彼女の泣き顔が脳裏に焼きついて離れない。