中腰、両手で大きなボールを抱えるような姿勢。

空手着を纏った龍太郎の姿が、そこにあった。

が。

「……」

小夜は声をかけるかどうか、迷う。

入学当初、龍太郎には声をかけづらい雰囲気があった。

刺々しい気配、見る者を射抜くような鋭い眼光。

迂闊に声をかけようものなら、即座に殴り合いに発展してしまいそうな、一種狂犬のような剣呑さが彼にはあった。

それが天神学園での生活を送るにつれ、その刺々しさもなくなり、親しみやすさを感じさせるような温厚さも持ち合わせている事に気づかされた。