「彩(アヤ)ちゃんや!!」



裸足のまま希理は庭に降りた。



「お父様、おはようございます。希理ちゃん、今から河原に遊びに行かへん?」


黒髪をきれいな三つ編みにした彩が蛍詩に礼儀正しくお辞儀をしたのを見た希理は足を止めた。



「こ…これが女の子か…眩しい」


女の子の手本を目の前に希理は衝撃を受けた。


「はは。おはよう彩ちゃん」


蛍詩は動揺する希理の後ろ姿を見て思わず笑ってしまった。
希理はその小さな笑い声を聞き逃さなかった。



「何笑っとんねん!自分の娘やろーっ!!」


――ボスッ!


「いてて」


くるりと蛍詩に向き直り、助走をつけて胸にタックルを決めた。


彩は仲睦まじい親子を見て笑っていた。


けれどその笑顔にはどこか影があった。