ーーコンコンッ



「……はい」



「主任の難波です」



「どうぞ」



「失礼します」



課長室に入ると、窓から街を見渡す課長。

黒田斗志樹。

本庁で8年もの実績を詰んだ、新生刑事課の中では、一番のキャリアが長い。



「今日からよろしくお願いします」



「あ……」



私に振り返って来た課長は、人の顔を見て一瞬、固まった。



「私の顔に何かついてますか?」



「……いや。朝礼に行こう」



…怪しい。

そう直感するも、突っ込むのも面倒で、私は課長とは別の扉から課のフロアーに入った。

弟の斗真や、従弟の山下七星たちの前に課長と立ち、朝礼を始める。



「全員、起立。こちらが新しく、この刑事課の課長として入られた黒田さんです」



「本庁から来た黒田だ。活躍を期待してるが、恥をかくような真似をするな。1%の確率があるなら、自分の命を懸けてでも掛かってけ」



「「「『はい――っ』」」」



全員が返事をする中、私は固く口を閉じて居た。

頷くわけもない。

低い確率で、命を懸けて死なれたら困る。

私は、仲間を殺させない。



「ペアは今まで通りで行いますが、少しだけ変更します」



私は車のキーをペアの1人ずつに渡しながら話して、課長にも一つ渡した。