「あれ?」

バス停でバスを待っていると、あることに気が付いた。

あたしにとって、お父さんの形見のようなものがない。

「あ、あれ?」

まだ、あたしが幼稚園の頃にクマのマスコットを買ってもらった。破れたりしたけど自分で直したりして、ずっと持ち続けていたもの。

形見っていうほど、すごいものじゃないけど、あたしにとって大切なものだ。
鞄につけていたのに、見当たらない…。

「落としちゃったかなぁ…」

さっきまで、ウキウキしていたのに今はもう、泣いてしまいそうなくらい落ち込んでいる。

ショックすぎて俯いていると、バスが来た。


バスに乗ってどれぐらいたったかわからない。
落ち込んでもしょうがない、と思って顔を上げると、まるで“ピキィッ”っと効果音を付けてもいいんじゃないかというくらいにあたしは、固まってしまった。

何でかっていうと…