「ブラック? 似合わないね」

 悪かったな、どうせ俺は童顔だ。

 典型的な弟顔だ。

「先生は何飲むの?」

「コーヒー。砂糖とミルクたっぷりで」

 優はククッと笑った。

「似合わない」

 コーヒーの香ばしい香りが漂うと、朝のまどろみから引き離されるのと同じように、玉置との時間から引き離される気がした。

 モヤモヤとくすぶり続ける玉置への気持ちが、優をなかなかベッドから下ろさなかった。

 そして、玉置の後ろ姿を眺めては、年の差の縮め方を考えていた。




 逢ひみてののちの心にくらぶれば
 昔はものを思はざりけり

 権中納言敦忠


 逢ひみてののちの心にくらぶれば
 昔は人を思はざりけり

 梶原優