あ、そっか。
大事な用事ってそのカノジョに電話でもするのかも……。
そう考えるとため息が出た。
はたと思考が止まる。
そして。
何、このため息?
内心でつぶやいた。
やっぱり取り残された気分。
まあ、どうでもいい。
すぐにいなくなるんだし。
本社に出張することはあるけれど、よほどの偶然ですれ違わないかぎり、唐沢と会うことはない。
せめて夢見る志穂のお手伝いでもしようか。
そう思ったわたしが席を空けるより早く。
「じゃ市羽さん、あとで」
と、唐沢は意味不明な言葉をかけて席を立った。
「やっぱり、唐沢代行と市羽さんて何かあるんだ」
ぽかんとした間抜けな顔のまま、唐沢の背中から志穂に目を移した。
むっつりした志穂の発言もまた意味不明だ。
「……やっぱり?」
ケータイ小説 野いちご
眠れないほど好き【短編】
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