わたしは内心でため息をついた。
とたん、空いた茜の席にだれかが座りこんだ。
「市羽有紀さん、きみって固いって云われない?」
フルネームで呼びながらなんの前置きもなく、不躾に訊ねたのは唐沢だった。
「……そう見られるみたいですね」
わたしは他人事のように答えた。
固く見られるということは、茜に云わせればお得らしい。
いいかげんに扱われる確率が減るという訳だ。
わたしからすれば近づきにくくて避けられている感がある。
けっして固くはなく、逆にだれかといたくて、いいように流されるタイプなんだけれど。
「みたいってことはそうじゃないってこと?」
「固いつもりはないんですけど」
「へぇ」
意味ありげな相づちだ。
「……なんでしょう?」
「いや」
短い返事と一緒に何か含んだような笑みが返ってきた。
わたしはこの唐沢のイメージを間違って捉えていたんだろうか。
いまの口調は砕けすぎている気がした。
ケータイ小説 野いちご
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