「ん?」
(誰かいる……)
兄貴の墓は霊園にあり、いくつも並んだ墓の中の一つに兄貴が眠っている。
だから、誰がいてもおかしくない。
おかしくないはずなのに……。
俺が目にした一人の女子高生。
ちょっと遠くからだけど、確かに見ている。
兄貴の墓を。
俺はその女子高生と兄貴の墓を交互に見た。
「どうしたの?こんなところで立ち止まって」
後ろから美佳に話しかけられてハッとなった。
「あ…いや…別に」
俺たちの会話が聞こえたせいか、その女子高生が俺たちに気づいて帰っていった。
「何あの子?知り合い?」
「いや、知らない…」
「変な子」
知るはずない……。
知るはずも、知る理由もない。
なのに、すごく気になる。
だって、兄貴の墓を見ていたから。