私はタケちゃんに隠れて、大きなあくびをする。

昨夜はチョコと長電話したり、今日の支度があったりで、寝るのがかなり遅くなっちゃって。

おかげで今日は完全に寝不足だ。


「タケちゃんゴメン! 私、やっぱり疲れたから、もう寝るね」

「えーっ!」

「そうそう、さっき、慎がタケちゃんとじっくり話したいって言ってたよ? これからのこととか、語り合いたいことがいっぱいあるんじゃない?」

そう言いながら、心の中で何度も慎に「ゴメンナサーイ!」って謝る。

だって、慎はそんなこと言ってないんだから。

……これは、さっきロビーで意地悪されたお返し。

これくらい、許してくれるよね?


すると、タケちゃんの心は一気に慎にロックオン。

私におやすみなさいの挨拶もしないまま、「慎せんぱーい!」って大部屋へと戻っていった。


その無邪気な背中を見送りながら、私はまた、ため息をつく。

ホントに、これから大変だ。

慎にはしっかり“指導”してもらわないとね……。


そして。

私は気を取り直して自分の部屋へ向かった。


明日ヤマタロに会えたら、素直になって、いろんなことを話してみよう。

それに……やっぱり、ご褒美だってもらわないといけないし!


早くヤマタロに会いたいな……。


早く眠れば、その分早く朝がやってくる。

だから……


「よーし、頑張って寝るぞーっ!」


こうしてようやく、私の長い長い一日が終わった。



《深月編・終》