気づいたら、生徒玄関の前にいた。



このまま帰っちゃおうかな…


玄関から見えた外は、私の涙をかわりに流してくれるかのように、ザーザーと雨が降っていた。



あの時、好きじゃないって言えば、また一緒にいられたかな。


ううん。

結局、こうなると思う。



我慢していたのに、涙が零れてくる。



「好きだよ…好き…だよ…」



「なんで泣いてるの?」



ふわっと体が軽くなった。



「俺は、絶対橘を泣かせない。俺と、付き合ってください」



坂下くんが拭ってくれる涙。


坂下くんは優しい。

だからかな、坂下くんといたら、忘れることができると思った。



「…はい」


私達以外誰もいない玄関。

私は、松村くんを諦めるために最低なことをした。