「僕は男嫌いだ。君も知っているだろう? このような性格だから、珍しくも許婚がいないんだ。いや、白紙になったというべきか。
まったく男のナニがいいのか、僕には理解できない。断然女の子の方が可愛いし、可憐だし、魅力的な生き物だと思うのだが」
 

「……、玲お嬢様。そういう発言は公共の場では控えて下さいね。誤解されかねないので」
 

本当のことを言ったまでだと玲は素っ気無く顔を背ける。

「もう17だというのに」

お嬢様は損していますよ、蘭子は肩を竦めた。

17といえば花盛り、学園生活も然りだが、恋愛も積極的に歩んでいい年頃。


なのに目前の令嬢はいつも女子と戯れて。


歩んでくる男子を一蹴しているというのもあるだろうけれど、それにしたって恋愛に対して消極的過ぎる。

彼女の父も、どうにかして男に興味を持たせたいと躍起になっているのだが、結果は謂わずもこれだ。

はてさて困った。
彼女はどうしたら男に興味を持ってくれるのだろうか。


……あ、そうだ。


蘭子は玲の興味を示しそうな話題を切り出した。
 
  

「最近、鈴理令嬢が恋に夢中だそうですよ」
 
  

竹之内財閥三女・竹之内鈴理は良くも悪くも玲の好敵手(ライバル)である。
 
なにかあれば、いつも彼女と競り合っていた玲だから、ああほら、言ったそばから少しばかり興味を示している。

仏頂面に視線を流してくる玲は、

「それがどうした」

あいつには大雅という許婚がいたではないか。
驚くことではないと毒づいてきた。


「とうとうあいつも」


大雅との恋愛に目覚めたか、どれほどオトメチックな奴になっているのか見物だ、なーんて皮肉る玲に、蘭子は首を横に振る。