「もしかして、結斗はアタシじゃなくてその子をかばうの…?」


「かばうとか、そういう問題じゃない。橘は俺を誘惑なんてしてないし、誘惑された憶えもない」


「嘘!結斗は絶対その子をかばってる!!」


バタバタと、図書室を出て走っていってしまった。



「ごめん、俺、追いかけなきゃ。また明日な」

彼女を追って、松村くんもいなくなってしまった。



「…私は、松村くんの名前も知らなかったんだ」


なぐられたことより、何よりそれがショックだった。


別に、悲しくなるようなことじゃないのに、涙がでてくる。


ねぇ、私、一つだけわかったことがあるよ。

松村くんと松村くんの彼女には、とても強い絆があること。


……私には、何があっても、絶対切れないような絆が。



――図書室で流した涙は、今までで一番しょっぱく感じた。