「公衆電話?」

「そうだ、連絡は必ず俺からする。公衆電話からな」

握りしめた携帯を見つめながら、おまえは頷く。

「着信を残した日の夕方、俺はここに来る。
もしその日におまえが来れなくても、連絡はいらない。
ある程度待ったら、俺も帰る」

「こんな便利はものがあるのに、公衆電話だなんて。アナログね」

伏し目がちにそう言っては笑う。

「着信履歴も確認したら必ずすぐに消せ」

不安げな顔が、ますますいとおしい。

俺たちは、お互いの連絡先を携帯から消去した。


俺たちが会ってることが公になれば、大問題だ。

特に博子にとっては。

だからこそ慎重に連絡を取らねばならない。

ただ、会いたいだけなのに…

その思いに何の偽りもない。

違い過ぎる世界の俺とおまえ。

触れ合うことも、
語り合うことですらも
世間は許さないだろう。

でもその目を盗んで、俺たちは会った。

会わずにはいられなかった…