本気で無理だと手に力を籠めれば、合間合間で「鼻で息すればいい」と助言してきてくれる。

あ、なーるほど。

そんなことにも気付かない俺って超キス下手なのかもしれませんね。

だってしょーがないでしょ。キスするってだけで一杯一杯になるんっすから!

……って、そうじゃなくって、キスを止めろとゆーてるんですよ、俺は!


だけど彼女はやめる気、さらさらないらしい。

ものすっごいねちっこいキスと一緒に、ものすっごいねちっこい手つきで背中に手を這わしてくる。


と、思いきやブレザーに手を掛けてきた。何する気なんだって片隅で警戒心を抱くけど、意識はキスに集中してるから状況判断能力が欠けちまう。

だから足元に何かが落ちて、俺等の片上靴を覆うそれを見る余裕さえない。

ディープなキスで喉を鳴らしてしまう俺に、先輩は容赦なし。
「ふっ」吐息を漏らすと、行為が荒々しくなった。

足が震えてきたぞ、マジで。

そっろそろ舌も痺れてきたな、とか思っていた頃、先輩がようやく解放してくれる。


「っ…はぁ…、…」


ぐったりと壁に凭れた。
ひゅうひゅう、呼吸を乱す俺とは対照的にすっきりした顔をする彼女。

「キスに溺れさせる空も可愛いな。息苦しそうに顔を顰めてるところが、またなんともそそる」

「あ…、悪趣味っす…、いたっ…、せんぱっ…」

「痕が消えかけてる」

荒呼吸を繰り返して彷彿している俺の首筋に痕をどんどん残してくれる先輩。

毎度付けてくれるもんだから、なかなかキスマークが消えてくれない。
首筋や鎖骨辺りには、いつもキスマークが存在している。まんま彼女の所有物の証みたいだ。

「っ、見えないところ…がいいっす。……っ、そこは見えますから」

「ふふっ、見せればいいさ。あたしの証なんだから」

と、先輩はすっげぇ楽しそうに見上げてきた。



「まさしく美味しいムードだな」