「紀香ーーーっ」


廊下から、お母さんが私の事を呼んでいる。


「お母さんちょっと待ってて!幹居君、ありがとう!!」


私はハンカチを受け取って幹居君にお礼を言い、お母さんの所へ。


「あの男の子、スゴくカッコイイわねーーー」


「だよねーーー私、ハンカチ拾って貰っちゃた!!」


この時、幹居君が私を見ながら……




「――――気に入った。あの女…………」




なんて小声で言ってニヤリと笑ってたなんて……



私はこの先、全く知らずに過ごしてゆく―――……


私の平穏は、既に彼方に消えていた。