「嫌です。では……」


「ま、待て。取引しよう?」


「取引?」


「そうだ。条件を言ってくれ。俺に出来る事なら何でもする。あ、慰謝料を出す。な? いくら欲しい?」


「お金なんか要りません!」


「あ、じゃあ、君を課長にしてやろう。それでどうだ?」


「そんなの、お断りです!」


「じゃあ、どうすればいいんだ?」


「二度と私に近付いたり、触らないって誓いますか?」


「あ、ああ、誓う。誓うとも。それなら黙っててくれるんだね? 約束だよ?」


「分かりました」


情けない顔の阿部に、私はそう言ってしまった。


阿部とのやり取りが面倒臭くて、早く終わらせたかったのだけど、これでなおさら祐樹に私の過去を、話しずらくなってしまった。