直感した。

もう俺は死ぬんだ、と。

こんなに血が出てるんだ。
助かるわけねぇって…

そう思った瞬間におまえが目の前に現れた。

真っ白な
眩しいほど真っ白な服を着て、
屈託のない笑顔を向けてくる。

『ねぇ、新明くん…』と。

その時思った。

博子、おまえにはやっぱり
短い髪がよく似合う、と。

そのほうが、おまえの黒目がちな瞳が
よく映える。

それに、頬にかかる髪を撫でる…
そんな仕草が
俺は好きだったからな。

おまえはためらうことなく、
俺の頭をそっと胸に抱き寄せた。

「血で、その服が汚れるだろうが…」
そう思っても、もう言葉が出てこなかった。

なぁ博子。
生まれ変わったら

俺は風になる。

おまえの頬を撫で、
花の香りを届け、
優しく包み込む。

そして時に激しく
この黒髪をかき乱し
おまえのすべてを奪い去る…

そんな風にな…

なぁ博子
言わなきゃいけないことがある。
どうしてもおまえに直接言いたかった言葉だ。

もう20年だぜ。
おまえに出逢ってから。

やっと言うんだな、俺…

口の中がカラカラで
うまく言えるかわからないけどよ。

だけど、今しかねぇんだよ、もう俺には。

いいか、
一回しか言わねぇからな…


耳の穴かっぽじって、よく聞けよ…




「博子、愛してる…」