それにしても、秋帆は健気に雛菊にアタックを続ける。

一目惚れの威力恐るべし。

『歩かない百科事典』の異名をとり、用がなければ…いや、用があってもキャリーカーの中から一歩も出なかった少年が。

(まるで天岩戸に閉じこもったテンテルダイジンみたいだったのにねぇ)

真菜は二人の様子を見ながらほくそ笑む。

ちなみに『テンテルダイジン』とは『天照大神』の事を言いたいらしい。

基本的に、真菜も秋帆の片思いは応援してやりたい派だ。

せっかく勇気を出してお近づきになろうとしているのだから、そりゃあクラスメイトとしては成就するように願っている。