≪HOTEL アダム&イヴ≫


一度も連れていってもらったことのないラブホのマッチ。


そのマッチどうしたの?


他の女とラブホに行った時にもらってきたわけ?


達也はあたしがそんなことを考えているなんてまるで思っていないみたい。


興味なさげな表情で、黙ってプカプカとタバコをふかし続ける。



「じゃあね」


火を灯した煙草に吸いついている達也の姿。


その横顔をずっと隣で見つめていられると思っていたのに。


今は目すら合わせてくれないなんて。



「……――っ」


いつまでも達也の横顔に見入っているわけにはいかない。


そんなのって、未練がましくてすっごい惨めだし。


あたしは込み上げてくる感情をグッと押し殺して達也のアパートを後にした。