「顔見た事ないのにカッコイイとか意味分かんない」


恨みがましく言う私に、怜香は眉を潜めた。

「何よ実亜、代宮君の事嫌いなの?」



「…そ、そういうわけじゃ…」

ない、とも言い切れない。



だって彼は、私の小さな小さな勇気を踏みにじったのだから!!


彼にとっては軽い挨拶に見えても、私にとってはかなり勇気のいる挨拶。

それを無視されちゃったわけだし……





うぅ…思い出しただけで涙とイライラがっ!!





「はぁ…とにかく、しばらくはこの席なわけだし、文句言ってないで仲良くしなさい」


そう言って怜香は自分の席へ帰って行った。






「何だかお母さんみたいだったな、今の怜香」

思わず呟いて笑ってしまった。








ガタッ…



突然聞こえた音に、体がビクッと揺れた。





ゆっくりと隣を見ると、根暗もどきが席に着いていた。







思わずじっと彼を見ていると、視線に気づいたのか、根暗もどきもこちらを見る。






ドキッ…








…ん?『ドキッ』?




…ええぇぇぇぇぇぇっ何私どうしたのー!!!









一人悶々としている私を見て、根暗もどきが呆れたようなため息をついた事に、私は気づかなかった。