セカイ国。


姫が目の前で攫われてしまい、国は大混乱である。ウチュウ人の優れた身体能力と、発展した科学技術を用いた武器の前に、セカイ人の力はまるで効かなかった。




:姫がさらわれる数ヶ月前、某研究所。


「ついに完成したぞ…!!これこそアンドロイドの超大作だ!」


研究所の所長は、出来上がったアンドロイドを見て心底喜んだ。自分の手で、人類の長年の夢を実現したのだ。


そう、アンドロイド史上初の「ココロ」を持つアンドロイドが誕生したのだ。「ココロ」とは人類の最大の神秘であり、奇跡。人の手で生み出すことはできないとされていた。が、ココロプログラムの開発は進み、やっとココロをもったアンドロイドが出来上がった。


「136体目にしてやっとか…No.136。目覚めよ。」


所長の呼びかけに答えるように、136は目をゆっくりと開いた。


「No.136、起動しました。あなたが俺を製造したのですか?」


No.136は栗色の髪に、翡翠色の瞳を持つ好青年といった見た目で、話口調はまさに人間のそれと同じだった。感情のこもったあたたかな声、眼差し。


「ああ…素晴らしい…。我が息子のようだ…。そうだ、名前をつけよう。お前の名前はイサムだ。いいな?」


「はい。記録しました。俺の名前はNo.136、イサム。ココロプログラム、正常に起動中です。」


それからしばらく、イサムは研究所で暮らした。朝目覚め、食事はしないが身支度をし、研究員たちの仕事を手伝ったり、和やかに談笑したりした。