「いや、そんなつもりじゃなかったんだ。すまなかった。許してくれ」


そんなような事を言い、阿部は私に頭を下げた。


私は目をつぶり、とにかく怒りを収める事に専念した。


少しして目を開けると、離れた席から私を見つめる神林君の視線に気付いた。


神林君と目が合うと、彼はほんの僅かに頷いた。


“よく言いましたね”


そんな彼の声が聞こえた気がした。


彼のおかげで急激に怒りは収まり、「分かっていただければ結構です」と、私は阿部に向かって言い、その場はなんとか収まった。