「会長は“新校舎が出来上がったばかりだというのにその近くで火遊びだなんて、馬鹿共が再び学校を破壊しかねない”と大変お怒りでした。お陰で今後ボクは安眠出来そうにありません」

少年が手で首を斬る動作をする。

それは丁度、舞白が生徒指導担当の教師にやったのと同じ。

「あの人達の下で働いていたら、心と命がいくつあっても足りませんよ」

「そのわりには随分と楽しそうなようだけど」

「え?」

「聞こえなかったならいいわ」

そう言った彼女はいつも通りのクールな表情を浮かべていたが、しかし何か思い詰めているようでもあった。






隣のベンチに、もう二人の姿はない。

ゆっくり目を閉じると。

生徒の騒ぎ声に混じって、蝉の声が聞こえてくる。

その日は、夏とは思えない程涼しかった。

と言っても、舞白はうだるような暑さも、凍える程の寒さも、感じることはないのだが。



「どうかこのまま……」

そっと呟いて、少女は満天の星空を見上げた。