side J


雨が降る森の中にある小さな家。
此所が俺達兄弟の唯一の居場所。安心できる場所。でも弟・ハインは俺にしがみついてブルブル震えている。雨が降っているからだ。ハインにとって雨は嫌な思い出しかない。


「大丈夫だ。俺がついてる。」


俺はハインをきつく抱きしめてやる。


「……兄さん、どこにも…行かないで……俺を置いて行かないで………。」


「大丈夫。どこにも行かない。ずっと一緒だ。」


しばらくするとハインは落ち着いてきた。




俺達はずっとふたりだった。
ふたりで生きてきた。


誰も俺達には近寄って来なかった……。



あの日もいつものように、ふたりで過ごしていた。