だけど。

オレはさっきからずっと、深月が慎と別れ話をした日のことを思い出していた。

あの日も確か、オレは一日中そわそわして落ち着かなかったんだ。

状況は全く違うっていうのに……何でだろう? 
なんとなく、今とあの時の気持ちは似ているような気がした。


オレは思わず苦笑してしまった。


そうだな。
陽人の言うことは一理あるかも知れないな。

深月のことをしっかり捕まえたつもりでいたのに、結局オレはアイツに振り回されっぱなしじゃないか。



「まぁ、そのうち慣れるから元気出せ。女に振り回されるって言うのも、いいもんだぞ」

オレの肩をバンバン叩きながら、親友は嬉しそうに語り続ける。



──類は友を呼ぶ、か。

そんな言葉、オレは絶対に認めない。


だけど。

今日ぐらいはそういうことにしといてやっても、まあ、いいか。



こんな能天気な気分になるのは、やっぱり深月の影響だな。




その時、背後から大きなエンジンの音が聞こえてきた。

振り返ってみると、ちょうど、深月たちを乗せたバスが学校をあとにするところだった。

どんなにバスを目で追っても、もう深月の姿は見えない。


……なんだか、長い一日になりそうだな。



完全にバスが視界から消えてしまうまで──

オレは、じっとその後ろ姿を見送った。




《ヤマタロ編・終》